本記事では残土の処分方法や費用目安について解説しています。
建築現場や土木工事の際に不要になる残土は、適切な方法で処分しなければなりません。
産業廃棄物扱いになる条件や、処分時の注意点にも触れていきますので参考にしてください。
残土の定義と産業廃棄物扱いとなる条件
残土の概念や定義について解説します。
また残土の種類や産業廃棄物扱いとなる条件についてもわかりやすくお伝えします。
残土とは?
残土の正式な呼び方は、「建設発生土(けんせつはっせいど)」といいます。
その名称のとおり、建築現場や土木現場などで建設副産物として発生する土のことを言います。
地盤改良や整地のために掘削を行った際、建物造成後に埋め戻しても余る土などがこれに当たります。
産業廃棄物扱いとなる条件は?
残土自体は建設副産物のため、産業廃棄物には該当しません。
そのため、建設現場から排出した際には、廃棄物処理法に規定される廃棄物として処理する必要はありません。
ただし残土に以下のような廃棄物が混入したまま排出する場合は、産業廃棄物として適切に処理しなければなりません。
廃棄物が混入した残土を空き地や河川敷に捨ててしまう、山林に埋め戻すなどの不法投棄を行った場合は、廃棄物処理法違反として罰金刑や懲役などの罰則が科せられるのです。
残土に含まれる可能性のある廃棄物には、以下のようなものがあげられます。
- がれき類
- 汚泥
- 木くず
- 廃プラスチック類
- ガラスくず
- コンクリートくず
- 金属くず
- 紙くず
- 繊維くず
- 廃油
- ゴムくず
- 燃えがら
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 鉱さい
- 動物性のさまざまなもの
- ばいじん
このような廃棄物が混入している残土は、産業廃棄物として扱います。
廃棄物が混入した残土は環境破壊や災害を招く危険性もはらんでいます。
2021年7月には、熱海市で廃棄物を含んだ建設発生残土を盛り土として使用し、土石流を発生させた事故なども発生。
この土石流の中には、木片やコンクリート片、金属片や別の市で使われている指定ゴミ袋など、さまざまな廃棄物が混入していたことなども報告されているのです。
残土には5つの種類とランクがある
残土に含まれている廃棄物の種類により、細かくランク分けされています。
- 第1種建設発生土
- 第2種建設発生土
- 第3種建設発生土
- 第4種建設発生土
- 泥土
このランクにより、残土の処分方法や再利用の基準が細かく分けられているのです。
区分 | 分類 | 再生資源利用可能区分 |
---|---|---|
第1種建設発生土 | 砂や礫に準ずるもの コーン指数:特になし |
道路用地の盛り土 土木構造物の裏込め 土地造成 工作物の埋め戻し 河川の高規格堤防 |
第2種建設発生土 | 砂質土、礫質土 及びこれらに準ずるもの コーン指数:800以上 |
土地の造成 道路用地の盛り土 河川築堤材料 工作物の埋め戻し |
第3種建設発生土 | 施工性が確保される粘性土 及びこれに準ずるもの コーン指数:400以上 |
土地造成 河川堤防の建設 道路用地の盛土 工作物の埋め戻し ※用途によっては土質の改良が必須 |
第4種建設発生土 | 粘性土 及びこれに準ずるもの コーン指数:200以上 |
土地造成 河川堤防の建設 道路用地の盛土 工作物の埋め戻し など ※用途によっては土質の改良が必須 |
泥土 | 泥水状の土 コーン指数:200未満 |
土質を改良した後、 水面の埋め立てに使用 |
コーン指数とはコーンペネトロメーターを一定速度で連続的に押し込んだ際に計測できる値です。
建設発生土の土質区分基準は、土の柔らかさを測る指数として用いられています。
なお上記の汚泥の基準を満たさず再利用ができない「建設汚泥」は、廃棄物処理法上の産業廃棄物として分類されています。
残土の処分方法
残土が出た場合の適切な処分方法や処理方法を解説します。
廃棄物が混入していない残土は産業廃棄物に当たらないため、再利用が可能です。
再利用する
残土の区分に応じて、適切な用途に再利用する方法があります。
前述した通り残土には第一種から第四種、泥土も含めると5つの区分に分けられます。
それぞれ区分に応じて、道路用地の盛り土や土木構造物の裏込め、土地造成や河川の堤防用の土として再利用が可能です。
泥土も土質改良を行えば、水面の埋め立てに使えるため、他の現場などで再利用できるところがないか検討するのがよいでしょう。
ただし建設に伴って発生した残土を埋め立てに利用する場合は、その地域の残土条例や農地法に基づく法令に沿って利用することが求められます。
ストックヤードに持ち込む
再利用可能な区分の残土は、ストックヤードに残土を持ち込むことが可能です。
ストックヤードとは工期のずれなどによりすぐに再利用がむずかしい残土などを、一時的に保管する場所です。
受け入れが可能なのは第1種建設発生土から第4種建設発生土までの残土と、改良土が対象です。
ストックヤードなどに持ち込まれた残土は、一定期間保管の末に有効利用されます。
ストックヤードへの残土の受け入れ金額は、残土の種類や地域によって異なります。
リサイクルプラントへ持ち込む
土質改良や汚泥処理を行うリサイクルプラントへも、残土の持ち込みが可能です。
現場のある自治体にストックヤードがない場合などでは、リサイクルプラントへの持ち込みを検討するとよいでしょう。
リサイクルプラントはストックヤードでは受け入れができない、汚泥の受け入れも可能。
持ち込まれた残土は適切に処理され、再資源化されます。
費用はストックヤードと比べると、やや割高となっている傾向にあります。
残土処分場へ持ち込む
各県市区町村の残土処分場(受入地)へ、残土を持ち込み処分してもらう方法もあります。
残土処分場へ持ち込まれた残土の多くは、再利用されることなくそのまま廃棄(埋め戻し処理)されます。
民間業者やNPO法人などで運営されており、国土交通省の各自治体の整備局などでも受け入れ値を公表しています。
主に山間部や沿岸部などに設けられていることが多いですが、近年は残土埋め立てによる崩落事故などの例も多く、自治体による規制なども厳しくなってきています。
全国に多くの残土処分場があるものの、その時によって受け入れの可否が異なるため、残土処分場と残土を処分したい建設業者とのマッチングサービスなども増えています。
処理業者(廃棄物処理業者)に処分を依頼する
処理業者では残土や産業廃棄物などさまざまな建築廃材などの回収や処理を行っています。
産業廃棄物収集運搬業の許可を受けている事業者であれば、廃棄物が混入した状態の残土も産業廃棄物としてそのまま処分できて便利です。
処分費用は車両のサイズによって異なるのが一般的。
再利用可能な残土よりも廃棄物が混じった土の方が、処分費用が高くなります。
処理業者には一般廃棄物を主に扱う事業者と、建築資材や廃材、残土などを主として扱う業者があります。
ガラ交じりの残土は産業廃棄物扱いとなるため、産業廃棄物運搬の許可を得ていない車両で運び込むことができません。
廃棄物処理業者であれば、トラックを用意したうえで現場まで残土を引き取りに来てもらえます。
残土の区分や状況に応じて、相談しつつ利用するようにしましょう。
残土処分にかかる費用目安
残土処分にかかる費用の目安を紹介します。
自治体や残土の種類によって費用が異なるため、あくまでも参考料金としてご覧ください。
ストックヤード利用の費用目安
下記は、全国の残土受け入れに関する受入平均料金です。
各地域で平均料金が異なるため、国土交通省で公表している全国計の料金を紹介します。
残土区分 | 平均処分費用/1㎥あたり |
---|---|
第1種建設発生土 | 2,291円 |
第2種建設発生土 | 2,175円 |
第3種建設発生土 | 2,569円 |
第4種建設発生土 | 5,159円 |
改良土 | 2,223円 |
参考:国土交通省 表19 建設副産物別-平均受入料金
リサイクルプラント利用の費用目安
下記は、リサイクルプラント受け入れ時の料金目安です。
国土交通省で公表されている料金をもとに、全国平均の費用をまとめています。
残土区分 | 平均処分費用/1㎥あたり |
---|---|
第1種建設発生土 | 3,416円 |
第2種建設発生土 | 3,261円 |
第3種建設発生土 | 3,771円 |
第4種建設発生土 | 5,105円 |
泥土 | 6,295円 |
参考:国土交通省 表19 建設副産物別-平均受入料金
残土処分場を利用した場合の費用目安
残土処分場へ直接残土を運び込んだ場合の費用です。
こちらも国土交通省が公表している資料を基に、全国平均の料金を算出したものとなります。
運搬車両 | 残土処分費(目安) |
---|---|
第1種建設発生土 | 2,501円 |
第2種建設発生土 | 1,722円 |
第3種建設発生土 | 2,049円 |
第4種建設発生土 | 2,671円 |
参考:国土交通省 表19 建設副産物別-平均受入料金
処理業者を利用した際の費用目安
処理業者による残土の処分費用は、業者によって大きく異なります。
以下は、処理業者の廃棄場所まで残土を持ち込んだ場合の費用目安です。
現場までの収集を依頼した場合は、下記よりも料金が高くなります。
また廃棄物の混じったガラ残土を処分する場合は、下記料金よりも少し高くなります。
運搬車両 | 残土処分費(目安) |
---|---|
軽ダンプ | 1,000円~1,500円 |
2tトラック | 5,000円~10,000円 |
3tトラック | 8,000円~15,000円 |
4tトラック | 10,000円~20,000円 |
7tトラック | 15,000円~25,000円 |
10tトラック | 20,000円~30,000円 |
残土は適切に処分しましょう
廃棄物の混入のない残土は、基本的に再利用が可能です。
有効な資源となるため、処分の際は再利用できる場所や手段で処分することが望ましいでしょう。
全国各地には残土の受け入れが可能な施設や企業が数多く存在します。
ただし必ずしも現場近くにあるとは限らないため、あらかじめ搬入可能な施設などを確認しておくのがよいでしょう。
また廃棄物が混入した残土は、産業廃棄物として処理が必要です。
産業廃棄物処理業者や、ガラ交じりの残土などの受け入れを行う事業者も多くあります。
残土の区分や廃棄物の混入の有無などに合わせ、適切に処分することが大切です。